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「あー、いい匂いを嗅いでると余計にお腹が空くね」
「宏樹さんだけ先に食べますか?」
ひと通り見終わってそんな会話をしていると、玄関ドアが開く音がした。
「あっ、帰ってきました!意外と早いです」
朝は慌ただしくてほとんど話もできなかったので、ようやくゆっくり和樹さんの顔を見られる嬉しさで、私は宏樹さんの目も憚 はばか らず玄関に駆け出した。
「おかえりなさい」
「おかえり、和樹」
笑顔で出迎えた私の背後のドアから、遅れて宏樹さんもひょいと顔を出した。
和樹さんは靴を脱ぐと、私と宏樹さんの顔を順に眺め、口元だけで微笑んだ。
「ただいま」
「今日は肉じゃがなんです」
リビングに入る彼に続きながら、私は説明した。
前回、和樹さんはとても気に入っておかわりしてくれたから、今日もたくさん作った。
ところが、返ってきたのは私をがっかりさせる言葉だった。
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