裏切りの予感ー1

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「あー、いい匂いを嗅いでると余計にお腹が空くね」 「宏樹さんだけ先に食べますか?」   ひと通り見終わってそんな会話をしていると、玄関ドアが開く音がした。 「あっ、帰ってきました!意外と早いです」 朝は慌ただしくてほとんど話もできなかったので、ようやくゆっくり和樹さんの顔を見られる嬉しさで、私は宏樹さんの目も憚 はばか らず玄関に駆け出した。 「おかえりなさい」 「おかえり、和樹」   笑顔で出迎えた私の背後のドアから、遅れて宏樹さんもひょいと顔を出した。 和樹さんは靴を脱ぐと、私と宏樹さんの顔を順に眺め、口元だけで微笑んだ。 「ただいま」 「今日は肉じゃがなんです」   リビングに入る彼に続きながら、私は説明した。 前回、和樹さんはとても気に入っておかわりしてくれたから、今日もたくさん作った。 ところが、返ってきたのは私をがっかりさせる言葉だった。
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