519人が本棚に入れています
本棚に追加
十分後、私たちはマンションのリビングで何とも気まずく向かい合っていた。
いや。気まずいと思っているのは私だけで、和樹さんは激怒している。
「会社は騒動にならなかったみたいで安心したよ。いや悪かったと思ってるよ、本当に」
ひとしきり謝罪したあと、宏樹さんはいつもの調子に戻った。
「どのツラ下げて戻ってきたんですか?」
和樹さんは怒りのせいなのか、また敬語に逆戻りしている。
「まあそうなんだけど、まだ宮瀬には帰りづらいしね。親父、カンカンらしいし」
「ここならいいだろうと? 神経疑うよ」
和樹さんがこんなに怒っているのを見るのは、婚約を変更した夜以来だ。
「結衣に合わせる顏もないはずでしょう」
「だからって一生結衣ちゃんに謝らずにいるわけにもいかないだろ?」
最初のコメントを投稿しよう!