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私も同じく、宏樹さんは〝大好きな兄〟だった。
でもそのことに気づこうとしなかった私は、周囲が決めた通りに宏樹さんとの結婚準備を進めた。
そして今は 和樹さんの傍で幸せそうな顔をしている。
和樹さんから〝薄っぺらい〟と思われて当然だ。
「だから和樹が俺に代わって結衣ちゃんと結婚すると聞いた時、身勝手ながらいい塩梅に収まったんじゃないかと思ってた」
「そんな簡単にいきません」
「ま、そうだよね。和樹は石頭だからな」
宏樹さんは緩すぎるんだと言いたいのを我慢していると、彼はまた真面目に喋り始めた。
「逃げ出したのはさっきも言った通り、結衣ちゃんではなく会社からだ。負けるとわかってる戦に臨まなくちゃならないのは苦痛だった。このことについて和樹とちゃんと喋ったことはないけど、和樹も自分が俺より優れてることはわかっていただろう。だからあいつは最初、わざと宮瀬に就職しなかったんだ」
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