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「いつも家族と距離を置いているように見えたから、理由はそれかと思ってました」
「違うと思うよ。俺の面子を保とうとしたんだろう」
宏樹さんは「情けない兄だよな」と言って笑った。
「でも、相談役だった祖父さんが死んで、指揮を執れる人間がいなくなった。親父は俺と同じタイプであまり経 営に向いてないからね。それで、親父の懇願で和樹がうちに来たんだよ」
宏樹さんが失踪した夜の父の〝かえって良かったんじゃないか?〟という言葉を思い出した。
宏樹さんはきっと周囲のそんな反応もわかっていたに違いない。
「和樹が来てからはさらに追いつめられたね。徐々にあいつの評判が俺を追い越していく。最初からわかってた結果だったけどね」
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