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「あの年になれば、そりゃ過去はあるよ。それとも童貞希望?」
「ちっ、違いますよ!」
いきなり慣れない単語が出てきたので、私は思わず大声を上げてしまった。
「結衣ちゃんと童貞について語り合う日が来るとは思わなかったなぁ」
「私はど……何も言ってません」
「はは、可愛いね」
おかしな冗談で私をからかったかと思えば、宏樹さんはまたひらりと話題を意味深な方向に振った。
「まあそれで、俺がいなくなって動きやすくなった和樹は、親父のいいなり経営を見るに見かねて手を打ったんだろうな。専務になってから発言権を増してるし、いろいろ方針転換している。全部あいつが仕掛けてる」
「……方針転換って?」
「それはまだ言えないけどね。機密情報だから」
父に関することを聞きたかったのに、気さくな宏樹さんでも締めるところは締めるものらしい。あっさり断られてしまった。
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