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宏樹さんは海外を旅したあと、国内で山を中心に写真を撮っていたという。
骨折したのはその最中らしい。
「いやあ、鍛えてないとダメだねぇ」
どうでもいいという風に、隣で和樹さんが溜息をついた。
そんな生活をしていた割に宏樹さんは相変わらずお洒落で小ざっぱりしていて、変わった点は少し日焼けしたことぐらいだ。
でも、私は他人を見るような気分で彼を眺めていた。
宏樹さんは骨折してからしばらくの間は〝友人〟宅でお世話になっていたらしい。
その友人とやらが女性だったとしても、別に何も感じない。
私にとって、目の前の人はすっかり〝ただの義兄〟になっていた。
〝友人〟と何があって追い出されたのかどうかは知らないけれど、とにかく宏樹さんは宮瀬に帰りづらいので、回復するまでしばらくここに居候するつもりらしい。
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