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「宮瀬に帰ればいいでしょう。怒られようが、それだけのことをやったんだから」
「でも今、タイミング悪くないか? いろいろ情報聞いてるけど」
宏樹さんが妙なことを言った。
「少なくとも和樹はそうじゃないのか? 旧体制派が盛り返すぞ」
和樹さんは宏樹さんを睨んでいる。
まるでそれ以上喋るなと言っているようだった。
旧体制派という言葉から、父のことではないかと思ったけれど、私は何も気づいていないふりをした。
昔から経営に携わる大人たちに囲まれて育ってきたので、秘密の匂いには敏感だ。
大人たちが話しにくそうにしていると、空気を読んでそっと立ち去る子供だった。
でも気を利かせるというより、「あっちへ行きなさい」と言われるのが嫌だっただけだ。
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