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私は和樹さんの表情を窺ってから、進んでの受諾にならず、拒否にもならないよう、用心深く答えた。
「食事の用意だけなら、負担が重いことはないです」
もし和樹さんが本気で宏樹さんを追い返したいのなら、とっくにそうしているはずだ。
実の兄への情もあるのだろうし、先ほどの裏事情もあるだろう。
和樹さんの中では宏樹さんの滞在はやむなしということなのだろうと解釈した。
誤解のないよう、食事の世話以外はタッチしませんという私の気持ちも入れたつもりだった。
でも、これでいいんですよね、という意味を込めて和樹さんを見つめると、彼はどこか冷ややかな、それでいて悲しそうな笑いを浮かべた。
「結衣、申し訳ない」
「いいですよ」
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