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幸いなことに翌日からは会社だったので、宏樹さんとほとんど顔を合わせることなく私はマンションを逃げ出せた。
もう恨んでもいないし特別な感情もないとはいえ、二人きりでいるのが気まずいことに変わりはない。
「おはよー! 夏休みは楽しかった?」
「うん」
出社すると理子ちゃんが元気いっぱいに笑いかけてくる。
彼女の笑顔に救われた気分だった。
楽しかった休み明けだというのに、宏樹さんのせいで逃げるように会社に来ているのが情けない。
「……あまり楽しくなかった?」
頑張って笑ったつもりなのに、さすが理子ちゃんはすぐに私の笑顔が疲れていることに気づいたらしい。
「ううん。すごく楽しかったんだけどね……」
ほんの数日前のバカンスが、今は遠い出来事のように思える。
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