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宏樹さんの居候生活は、特に大きな問題もなく過ぎていった。
それでも早く出て行ってほしいことに変わりはない。
和樹さんと二人きりになる時間がほとんどなくなってし まったのだ。
唯一、水入らずで会話できるのは夜、ベッドに入ってからだ。
和樹さんが疲れているはずだと思うけれど、少しでも長く彼と話したくて、私はその日あったことなどを取り留めなく喋った。
それを和樹さんは優しく相槌を打ちながら聞いてくれる。
ただ、以前みたいに毎夜のようにベッドで求められることはなくなった。
当然と言えば当然だ。
同じ家の中に宏樹さんがいるのだから。
でも、私と和樹さんの結びつきは身体だけではないと感じ始めていたのに、その自信は脆 く揺らいでいた。
会話すら減ってしまい、距離が開いた気がするのだ。
何となく、最初の一か月の状態に戻ってしまったようなぎこちなさがあった。
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