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「昨日、初めて気持ちを言葉にして伝えたんです。でも、振られちゃいました。聞かなかったことにしますって。私、妻なのに……」
ずっと耐えてきたものが噴き出してしまい、私は嗚咽した。
「感情をシャットアウトされたら、私は誰を愛せばいいんですか。父までが除外されていく中で、どこに自分の存在価値を見つけたらいいんですか」
不意に肩を抱く手に力が入り、広い胸に抱きしめられた。
「宏樹さん、何を……」
「ねえ結衣ちゃん。もう、俺に戻る?」
「ダメです、放して」
「あんな冷たい男のために泣かなくていいよ」
その時、キッチンの入口で音がしたので、私は宏樹さんの腕から逃れようともがきながら振り向いた。
「和樹さん……」
キッチンの入口には和樹さんが立っていた。
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