裏切りの予感ー2

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私と宏樹さんが抱き合っていたというのに、彼の顔は怖いほど落ち着き払っていた。 私を掴んだまま、宏樹さんが言った。 「おかえり、和樹」 「間が悪かったようで」   和樹さんはそれだけ言って、背を向けて歩いて行く。 「待って、和樹さん」   リビングを出た和樹さんは寝室に入り、クローゼットから出張用にネクタイを数本取り出した。 「誤解です。宏樹さんは私を慰めていただけで、何もないんです」 「わかりました」   機械的な返事に拳を握り締める。 「真剣な話です。ちゃんとこちらを向いてください。和樹さんが先導して父を退任に追い込んだというのは、本当ですか?」 和樹さんは黙って私に向き直った。 感情の見えない瞳に、私の心が余計に粟立つ。
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