裏切りの予感ー2

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「明日は納車でしたね」 「そうです」   金曜日の朝食の時、和樹さんが私に言った。 忙しくてもちゃんと覚えていてくれたことが嬉しくて、笑顔で返事する。 「午前中に取りに行って、終日練習かな」 「えー、そんなハードな」   嘆くふりをしていても、本当は嬉しくてたまらない。 車の中とはいえ、和樹さんと一日中二人きりでいられるのは二週間ぶりだ。 たった二週間でも、私は彼との水入らずの時間に飢えていた。 「あれっ、結衣ちゃん車買ったの?」 そこに松葉杖の音がキッチンに入ってきて、原因の人が会話に割り込んでくる。 「そうなんです」 「意外だね。何もできなさそうなのに」 「失礼な」   真っ向から否定できないのが悔しい。 「だからそれを脱却するんです」 「ごちそうさま」 宏樹さんに答えていると、隣でコーヒーを飲み終えた和樹さんが時計を見て立ち上がる。
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