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和樹さんが部屋を出て行き、続いて玄関ドアが閉まる音が聞こえた。
震える手で封筒を取る。
中には折り畳んだ薄い紙が入っていた。
それを開いた私は衝撃でよろめいた。
離婚届──
そこにはすでに彼の名前が記入してあり、捺印もされていた。
伸びやかで骨格のしっかりした男らしい字をしばらく見つめる。
同じような項目の婚姻届を書いたのは、ほんの三か月前だった。
心は血を流しているのに、来るべきものをようやく迎えて楽になれたような、諦めの感情もあった。
彼と婚約した日から、私はこの時を恐れながらも覚悟していたのだろう。
〝自由になってもらいたいと、心から願っています〟
私もあなたを自由にしてあげる。
だって、それでもあなたを愛しているから。
閉じた瞼から一筋、涙が頬を伝った。
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