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「あっ、もうそんな時間ですか」
私も慌てて立ち上がり、和樹さんに続いてキッチンを出ようとすると、宏樹さんに呼び止められた。
「結衣ちゃんも一緒に和樹の社用車で行くの?」
「いいえ、私は電車通勤です」
「乗ればいいのに。疲れが違うでしょ」
「周囲の目がありますし、特別扱いは良くないかなと思って。結婚前から電車通勤ですから慣れてます」
「さすが夏目家の教育を受けてるね。意識が徹底してるよ」
「そんなことは……」
こんな風に、賑やかな宏樹さんによっていつのまにか会話の相手は和樹さんから宏樹さんになってしまうの だ。
宏樹さんとは距離を置きたいのに、在宅時間は圧倒的に和樹さんが少ないのでうまくいかない。
何だか子供のころの構図が蘇ったようで和樹さんに対して後ろめたく感じてしまうけれど、それはともかく、和樹さんと翌日の約束ができたことに私はホクホクしながら出勤したのだった。
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