裏切りの予感ー2

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「ああ……もう嫌……」 一時間後、私はようやくたどり着いたマンションの前でハンドルに突っ伏していた。 普通なら二十分ほどの距離なのに一時間もかかってしまったのは、スピードを出せないのと、曲がりたいところで曲がることができず、 道に迷ったせいだ。 「人並みになるって難しい……」   使えない自分がほとほと嫌になる。 途中で何度か絶望し、乗り捨てて帰ろうかとまで考えたものの、ようやく マンションが見えてきた時は安堵のあまり、わっと泣き出しそうになった。 和樹さんはきっとびっくりするだろう。 それを想像すると俄然嬉しくなり、懲りない私は次の課題である車庫入れ練習を始めた。 幸いマンションの駐車場は空いていて、車の出入りはない。  
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