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それは松葉杖をついた宏樹さんだった。
「なかなか帰って来ないからどうしたのかなと思って下を見たら、カーポートに変な動きの車がいたからさ」
わざわざ不自由な身体で降りてきてくれたらしい。
和樹さんでないのは残念だけど、地獄で仏を見た気分だった。
「自分で練習して、和樹さんを驚かせようと思ったんです……」
安堵と疲れで私は半泣きになった。
「偉いよ、結衣ちゃん。よく頑張った」
宏樹さんは半分面白がっているようだったけれど、疲れた今はそんな言葉が有難く染みる。
「俺、右足使えないから運転代わってあげられないけど、指示出すからその通りにやってごらん」
身軽に動けないため危険だということで宏樹さんは助手席に乗ることになり、横から指示をもらう形で脱出を試みる。
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