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「キャンセルはしない。最初に言った通り、相手は和樹くんに変更だ」
そう、確かにそう聞いた。でも、そんなことって……。
「よく聞きなさい。この週末に届くよう、招待状の発送は昨日付で終わっている。今日は土曜日だから、都内には既に届いているだろう。世間への体面を損ねてはあちらの事業にも影響する。宮瀬家との婚姻を取り消す訳にはいかないんだ」
「だって……だって、招待状の新郎の名前は宏樹さんになってるじゃない」
「招待状のミスだと言えばいい」
「そんなミスある訳が──」
「公にした両家の縁組を取り消す方がダメージが大きいだろう」
父の有無を言わせぬ口調に、私は抗議の声を飲み込んだ。
朝から両親が不在だったのは、先方とこのことを決めていたのだろう。
これはもう両家の決定事項で、何を言ったって動かせないのだ。
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