偽りのキスー1

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「宮瀬本部長に挨拶してきたの?」 「はい」 席に着くと、経営企画室の先輩である横谷野々花が話しかけてきた。 「素敵よね」 「そうですね」 苦手意識を正直に明かしてしまうわけにもいかず、調子を合わせて頷いた。 野々花先輩は初日のほぼ一番乗りで和樹さんに挨拶に行っていた。 何事にも行動が早く、要領がいいのだ。 「本部長とは面識あったの? 結衣ちゃんのお家と宮瀬家とはお付き合いがあったんでしょ?」 「ええ、まあ……。でも、覚えていないほど昔の頃の話ですよ」 私が宏樹さんと婚約していることは、披露宴の招待状を出す時期までは伏せることになっている。 だからお世話になっている野々花先輩には打ち明けたいのに、そうはいかないのが歯痒い。
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