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「まあとにかく、兄弟間の火花が楽しみね。対照的だもの。華のある兄と、実力派の弟。……あら、噂をすれば」
お喋りの間に宏樹さんが弟を訪ねて来ていたらしく、戦略推進本部長室から兄弟揃って出てくるのが見えた。
笑顔で何か喋っている宏樹さんに、和樹さんはわずかに微笑みながら答えている。
細身の長身という背格好は同じでも、二人の印象はさほど似ていない。
特に目が違っていた。
宏樹さんは柔らかく、いつもふざけて笑っているような目をしているのに、和樹さんの目はあまり感情が出ない。
まるで深さの知れない静かな湖面のようだなと思う。
先ほど向かい合った時に間近で見た彼を思い浮かべると、またざわりとした感覚に襲われる。
視界に彼が入って来るとそれはさらに強くなり、落ち着かなくなった。
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