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「二人揃うと余計に注目集めちゃうわね」
野々花先輩は頬杖をついて、うっとりと眺めている。
「先輩、見過ぎですよ」
「そういう結衣ちゃんも見てるじゃない」
「私は先輩より控えめです」
私たちがあまりに露骨に見ていたせいか、宏樹さんがふとこちらに気づき、視線が合った。
〝しまった〟と思ったけれど、宏樹さんは私たちに微笑みかけ、和樹さんと連れ立って廊下へと出て行った。
「ねえ、今、常務がこっち見て笑わなかった?」
「気づきませんでしたけど」
「絶対そうよ」
野々花先輩のはしゃぐ声を聞きながら、口元が緩んだ。
これまでお付き合いの経験がないせいで男性と接するのに身構えてしまう私は、宏樹さんを見るとほっとする。
小さな頃、いつも一緒にいて遊んでくれた、優しくて格好いいお兄さん。
親の決めた相手が彼のような素敵な人だなんて、私は恵まれていると思う。
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