偽りのキスー1

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挙式は六月に決まり、両家の親によって披露宴会場も都内随一の一流ホテルに決められた。 両家の結びつきと隆盛を示すため、披露宴の招待客は相当な数だ。 けれど準備が進むうち、宏樹さんは何かと用事があると言っては欠席することが多くなっていった。 「結衣ちゃん、ごめん! 今度の日曜のメニュー決め、俺行けなくなったんだ」 「え、お仕事ですか?」 「いや、仕事もあるんだけど……友達の集まりがあってね。最近顔出せてないし。ごめん」 「いいですよ。たまには羽を伸ばしてきてください」 「ごめんね、メニューは結衣ちゃんの好きなもので決めていいよ」 「でも新婦はほとんど食べられないって聞きました。打ち合わせの時、迷ったら宏樹さんの希望をメールで聞きますね」 結局、メールで尋ねても返事はなく、後から謝りのメールが来た。 でも常務ともなれば相当な重責だろうし、たまの休日には友人たちとの気晴らしも必要なのだろう。 結婚すれば、いつも一緒にいるのだから……。 そう考え、私はたいして気に留めずにいた。
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