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やがて彼らが中学生になる頃には、二人の違いはいっそう対照的になった。
宏樹さんは人当たりよく朗らかで、華やかな友人たちにいつも取り巻かれていたけれど、和樹さんの方はどこか冷淡で、私と目を合わせることもない。
学業がとても優秀らしく、超難関の進学校に通っているという。
それもあって近寄りがたく感じてしまい、私は彼の前に立つと、幼馴染だというのにいつも緊張してしまってうまく話せなかった。
お互いに学業が忙しくなると双方の子供を交えて会う機会はなくなったけれど、両家の縁談は幼い頃の冗談めいた話から徐々に段階を進めていった。相手は長男である宏樹さんだ。
この縁談には両家の家業の事情も大きく絡んでいる。
私の父は一族の会社で長年役員を務め、大きな貢献をおさめてきたものの、直系でないために社長の座に就くことはなかった。
野心家で上昇志向の強い父は傍流の身が悔しかったのだろう。
今になって思えば、父は自分の無念の代わりに娘の私を大企業の社長の妻の座に座らせたかったのだと思う。
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