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一方で、宮瀬家にとって夏目家は懇意にしている友人というだけでなく、家業においてもアキレス腱のような相手だった。
経営するグループ企業の多くが夏目一族の商社と大口取引をしているためだ。
また、うちの父が現在顧問を務めている投資銀行も、宮瀬ホールディングスに大型投資をしているという話を聞いたことがある。
幼い私はそんな事情を知らず、格好良くて優しいお兄さんにただ憧れていた。
父は私の教育に徹底していて、規律を重んじる名門女子校に私を入学させた。
男女交際を禁止する厳しい校風の中で育った私は男性とのお付き合いを知らない。
宏樹さんと結婚することになると知っていたから、必要なかった。
私が大学を卒業すると、宮瀬家の家業を理解するために宮瀬ホールディングスへの入社が決められた。
夏目家の商社には入れたくない、父の意地もあっただろう。
わざわざ父に歯向かい嫌な思いをさせる理由もないし、むしろ私は夏目一族の商社より宮瀬家の製造業の方に魅力を感じていたので、進んでの入社だった。
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