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和樹さんが着任したのは私が所属する戦略推進本部の本部長で、中枢部門の中で最も重要なポストだ。
常務である兄の宏樹さんのような取締役ではないものの、二十代でいきなりその職というのは社長一族ならではの破格の人事だった。
これまで謎に包まれていた第二の社長子息の登場とあって、着任前から彼は社内中の注目を浴びていた。
着任初日、本部全体への挨拶前に周囲と談笑している彼を見た時、私は内心少し動揺してしまった。
最後に会ったのは確か彼が中学生、私が小学生の頃だったから、実に十年以上の年月を経ての再会だ。
彼は昔の面影をかすかに残しながら、すっかり大人の男になっていた。
背丈は百八十センチをゆうに超えているだろう。
長身の宏樹さんよりもさらに高い。
無口だった昔と少し変わり、柔らかな物腰で人当たりが良い印象だ。
でも理知的な顔立ちに浮かべた微笑みはどこか心の読めない冷ややかさを感じさせた。
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