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「風……?」
こんな時間、こんな天候で、普段誰も住んでいないこの家に来る人間はいないはずだ。
私がここに居ることは、誰も知らないのだから。
恐怖で身がすくんだその時、声が聞こえた。
「……結衣!」
空耳だろうか。
膝から顔を上げたまま耳を澄ませる。
「結衣!」
この声は……。
夢遊病のようにふらふらと立ち上がる。
そんなはずはない。そんなことがある訳がないと思うのに、たとえ風のいたずらであっても確かめずにはいられなかった。
「結衣……!」
私がドアを開けるのと、もう一度叫び声が聞こえたのは同時だった。
そこには、ずぶ濡れの和樹さんが立っていた。
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