564人が本棚に入れています
本棚に追加
会社関係の整理を終えると、私は夏目家を訪れた。
和樹さんと一緒に訪ねた前回と同じく、父はリビングのソファーで私を迎えた。
でも前と違うのは、顔から以前のような生気が抜けていることだった。
「結衣、和樹くんとはうまくやってるか？」
「うん」
いきなり核心の話題を切り出され、本当のことが言えずについ「うん」と言ってしまった。
「そうか」
父の返事は短かったけれど、ほっとしたような優しい表情を浮かべた。
父にとって和樹さんは裏切り者だというのに……。
これまでなら、その笑顔は殴られても「痛くない」と余裕を装っていたものだろう。
でも今日の父の顔は違っていた。
最初のコメントを投稿しよう！