いつか優しい雨になるー2

12/30
前へ
/30ページ
次へ
「あの……まだたくさん疑問があるんです。和樹さんは婚約当時、恋人がいたと聞きました。その人と結婚後も 続いていると」 「出所はわかってるけど、それは誤報だよ」   和樹さんはきっぱり否定した。 「過去にはいたよ。でも正真正銘、過去だ」   それから彼は少し悲しそうな顔になり、優しく私の髪を撫でた。 「他の女性と関係していると嘘を吹き込まれていたなんて、知らなかったんだ。どんな思いで僕に身体を預けていたのかと思うと……横谷の件は気づけなくて本当に申し訳なかった」 あの頃の辛さを思い出して、少しだけ涙が滲んだ。 その雫を彼が唇で拭う。 過去が気にならない訳ではない。 でも、彼はここに飛び込んできた時、私と再会してから、それまでの過去は 消えてしまったと言ってくれた。 それで十分だ。 とはいえ、疑問はそれだけではない。 彼の胸から顔を上げ、二つ目の質問に移った。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1241人が本棚に入れています
本棚に追加