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「あの……まだたくさん疑問があるんです。和樹さんは婚約当時、恋人がいたと聞きました。その人と結婚後も 続いていると」
「出所はわかってるけど、それは誤報だよ」
和樹さんはきっぱり否定した。
「過去にはいたよ。でも正真正銘、過去だ」
それから彼は少し悲しそうな顔になり、優しく私の髪を撫でた。
「他の女性と関係していると嘘を吹き込まれていたなんて、知らなかったんだ。どんな思いで僕に身体を預けていたのかと思うと……横谷の件は気づけなくて本当に申し訳なかった」
あの頃の辛さを思い出して、少しだけ涙が滲んだ。
その雫を彼が唇で拭う。
過去が気にならない訳ではない。
でも、彼はここに飛び込んできた時、私と再会してから、それまでの過去は
消えてしまったと言ってくれた。
それで十分だ。
とはいえ、疑問はそれだけではない。
彼の胸から顔を上げ、二つ目の質問に移った。
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