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「でも、彼女は本当の理由をわかっていた。結衣に謝っておいてくれと言われたよ。妬ましかったんだと。それに、そんな自分に嫌気がさしていたと」
それを聞くと、彼女に対する自分の行為に後悔が込み上げた。
「私も悪いんです。先輩にはお世話になったのに、私は秘密が多かったから」
「それは仕方ないだろう。彼女もわかってはいたはずだ。そう言って謝ってた」
「でも退職なんて……」
「彼女自身が選んだことだ。宮瀬の専務秘書の経歴だったら転職市場では高評価だから、心機一転ステップアップしたいと言っていた。自分を変えたいと」
経営企画室時代に仲良くしてもらったことを思うとやるせない。
でも、さよならを言わない方がいい別れもあるのだろう。
少ししんみりしてしまった私に、和樹さんが意外なことを告げた。
「横谷の嫌がらせをなぜ僕が知ったかというと、兄なんだ」
「宏樹さん?」
「今日の昼頃、いきなり広島の事業所に現れた」
「ええっ?」
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