いつか優しい雨になるー2

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「初めて兄に怒られたよ。こんなところで下らない仕事してないで早く帰れとね。それで帰京予定より早く栃木にいられるんだよ。本当は夕方の飛行機だったんだけど、すぐに新幹線に飛び乗った」 「え、じゃあ仕事は?」 「午後に予定していたのは市場視察だけだったんだが、兄が代わってくれたよ。兄の得意分野だからね。半日だけ常務に復帰してやると言って。兄はそのためにわざわざ宮瀬にスーツを取りに帰って親に怒られたらしい。だから本当はもっと早く来たかったのに遅くなったと言っていた。たっぷり絞られたんだな」 「やだ、もう……。私、宏樹さんを追い出しちゃったのに」 「しかも台風で飛行機が欠航だから、兄は今頃どうなってるんだか」 泣き腫らした目からまた涙が出てくる。 でもこれは泣き笑いだ。 「兄には一生頭が上がらない気がする」 二人とも笑いが収まると、私は和樹さんを見つめた。
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