1247人が本棚に入れています
本棚に追加
「どうして……? 離婚届にはサインしました。もう私に縛られなくていいんです」
「結衣を自由にしたかった。でも、無理だった。結衣、僕が無理なんだ」
和樹さんの言葉はあちこちが省略されていて、訳が分からない。
「ずっと結衣が好きだった。いつからかもわからない。再会した時からかもしれないし、子供の頃からだったの かもしれない。大人になってもう一度会ってから、結衣と離れていた時間のことは消えてしまった。僕の記憶にはもう結衣しかいない」
普段の和樹さんからは考えられないほど取り乱していて、言っていることに脈絡がない。
「信じなくてごめん。冷たくあたってごめん。君に溺れてしまったら、いつか結衣を手放す時、自分がどうなるのかを考えると怖かったんだ」
少しずつ彼の言葉が入ってくる。
でも私の身体は金縛りにあったように動いてくれなかった。
最初のコメントを投稿しよう!