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「──だから帰って来てくれなかったの? ご飯も食べてくれなかったの?」
「いっそひどい男だと軽蔑されたかった。でも僕は中途半端で、できなかった。結衣が可愛くて愛おしくて仕方がなかった。あの日、結衣が抱いてくれと言った時、負けてしまったんだ」
ああ……。
色んな断片が繋がり始め、身を守ろうと息を止めていた心が呼吸を始める。
「一度抱いたあと、二重の後悔に苛まれた。後戻りできないほど好きになってしまった後悔と、結衣を泣かせてしまった後悔と……。僕に抱かれるのが辛かったのだと」
全然違う。
和樹さんは私を義務で抱いていると思ったから泣いたのに。
でもうまく声にできずにいる間に、和樹さんは喋り続けた。
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