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「二度目は酒に酔ってしまった。でも結衣が感じている顔を見ると、止められなくなっていった。一度超えてしまったのだからと、自分を許してしまった。でも、結衣に溺れるうち、今度は夏目のお義父さんに代わって、僕が結衣を閉じ込めている気がした。結衣が僕に尽くせば尽くしてくれるほど、魅力的に僕に応えるほど、僕は強制的な結婚に結衣を閉じ込めて貪っている気がした。結衣にとって、僕との結婚は不可抗力だったから」
彼はそこで髪から流れ落ちる雫を拭った。
その瞳は雨のせいか、濡れているように見えた。
「僕は最初からお義父さんの排斥に動いていた。結衣を裏切っていたんだ。だからいずれ結衣に憎まれると思っていた。でも今日、自分がどれだけ馬鹿だったか改めて痛感したんだ。僕が裏切ろうと、結衣は本物の 愛情を注いでくれていたんだと。夕方ようやく家に着いたのに、結衣はいなかった。空っぽのリビングには結衣の忘れ物があって……」
「忘れ物?」
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