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「結衣の教科書だよ。それを持ち上げたら、いつか僕が贈った花が落ちた。丁寧に、押し花にしてあった」
和樹さんは自分を落ち着けるように、そこで大きく息を吐いた。
「僕に知られないようにひっそりと、いつも結衣は僕を思ってくれていたのに。僕の裏切りを知りながら、それでもずっと言葉を超えるもので十分伝えてくれていたのに。家中のあちこちに結衣の僕に対する愛が溢れていた。離婚届はその究極だったと気づいた。どんな思いでこれを書いてくれたのかと……。結衣、許してくれ」
私の目はもう腫れているからなのか、涙のせいなのか、彼の顔も滲んではっきり見えなくなっている。
「身勝手だってわかってる。だけどごめん、愛してるんだ」
ようやく動いた身体で和樹さんの胸に飛び込んだ。
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