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この胸に抱かれるのはいつ以来だろう。
今はぐっしょりと濡れ、冷えきっていた。
両腕を回し、自分が濡れるのも構わず抱き締める。
冷えた布の向こうに、確かな温もりと鼓動が聞こえた。
「好きってずっと言いたかった。でもずっと言えなかった……。やっと勇気を出して言ったのに、聞かなかったことにしますって──」
恋しい胸にすがりつき、今まで孤独だったぶん、子どもみたいに泣きじゃくった。
これ以上流す涙はないと思っていたのに、 涙は後から後から溢れてきた。
「結衣……ごめん」
和樹さんは私が泣き止むまで、ずっと謝り続けていた。
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