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「玄関、開いたままだった」
ようやく泣き止むと、私は吹き込む雨風で現実に気づいた。私たちがいる土間は水浸しだ。
「……和樹さんは、どうしてそんなにずぶ濡れになっちゃったんですか?」
扉を閉め、和樹さんを部屋の中に招き入れながら尋ねた。
「百メートルほど向こうで倒木が道路を塞いでたから、そこから走って来た」
「そんなにひどい台風だったんですね」
「ここまで本当に運転してきたの?」
「はい」
胸を張ったあと、私は少ししょんぼりした。
「実は最後に気が抜けて、石垣にぶつけてしまいました……」
「そんなのいいよ。結衣が那須に行ったんじゃないかと思った時、全身から血の気が引いた。完全に失うかもしれないと思ったよ。ここまでどうやって運転してきたか覚えてない。ラジオの事故情報を聞きながら、とにかく怖かった。無謀すぎるよ」
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