お泊り

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お泊り

 衛兵は、とある小さな宿屋に二人を連れていった。ここで、王妃から呼び出しを待つようにとのことだった。衛兵は王がお忍びで不在であることを知っていたようである。  宿屋の女中が二人を部屋に案内し、何かあったらお呼びくださいね~、おふたり若いからね~、ごゆっくり~、とニタニタ去っていった。  スフィンクスはエディプスの背中から飛び降りて、四つ足になると前あしをぐっとのばし、翼をぴんと広げ、ストレッチすると、体をブルブルとふるわせた。そして、窓に小走りで近づいた。 「わぁ!素敵!オーシャンビューよ!エーゲ海かな?」 「たぶんイリキ湖だと思うよ」 「わぁ!あの山がピキオン山かな~。なつかしい~」  大はしゃぎのスフィンクス。 「あのぅ・・」 「なに?エディー」 「ぼくはまあ、エディーでもいいんですけど、スフィンクスさんって、名前なの?それとも種族名?」 「う~ん、名前かな?でもスフィンクスってわたししかいないから、どっちでもいいんじゃない」 「エジプトにもいるって聞いたことがありますけど」 「え~、あれのこと?あれはおかっぱ頭の人面ライオンじゃん。羽生えてないし、全然スフィンクスじゃないよ。間違ってそう呼ばれてるだけ」 「そうなんですか。確かにあんまり似てないです。ところで、見に行ったんですか?」 「うん、空飛んだらエジプトまでそんなに遠くないよ」 と、翼をパタパタさせる。いい香りがエディプスの鼻に届く。 「持ち場、離れてよかったんですか?」 「あのね、ず~っと張り付いてるって無理でしょ。それにときどき道()けとかないと全員食べちゃったら宅配とか届かないでしょ」 「それで“月刊・線文字B”が月遅れなんだ・・・」 「なに?」 「いえ、大丈夫です。スフィンクスさん、ってちょっと呼びにくいですね」 「じゃあ、スーちゃん」 「へ?」 「スーちゃん、でお願いします」
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