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入国審査
ギリシャは都市国家である。それぞれ王国を名乗ってはいるものの、現在の感覚で言えばせいぜい県の規模であり、王といっても県知事くらいの権力である。テーバイにやってきたとはいえ、県境の山を越えて隣の県に着いたくらいの感覚だ。
「ねえ、エディー?」
「(エディーなんだ)なんですか?」
「もうすぐテーバイでしょ?エディーはさ、ピキオン山の怪物スフィンクスを退治した勇者としてテーバイに入ることになるのね。だったら、わたしがこの格好でついてくるのってまずくない?」
「まあ、全部君の予言ですけどね。でも、たしかに怪しいかも。で、どうする?」
「わたし、胸から上はだいたい人間じゃん?だから、エディーがわたしをおんぶして、ベールを上からかけたらどうかな?」
「え?重くないですか?」
「何よ!1タレントもないからね!」
「・・・。単位がよくわかりません」
註)約50kg 諸説あり
「あ、ちょっと待って。(ぷちっ)いたたた・・・」
スフィンクスは黄金の羽根を1枚抜き取ってエディプスに渡した。
「何ですか、これ?」
「わたしが合図したら出して」
スフィンクスはエディプスの背中に乗ると、翼をできるだけ小さくたたみ、その上からベールをかけた。空を飛ぶ動物だけあって、意外に軽かった。背中にスフィンクスの胸を感じ、エディプスはドキドキした。
「じゃあ、テーバイに入るけど、君はぼくのお姉さんで、足を怪我したっていう設定ね」
「妹がいい」
「姉でしょ」
「妹!」
「ところでスフィンクスさんは何才なの?」
「10万22才」
「・・・・。姉です」
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