挽歌

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「オイ、重房。」 「なんだよぅ…」 「お前、いつまでこなな暮らしをつづける気でいるのだ?」 「いつまでって…」 「福島県で一家が焼死してしまった大火災については亡くなったオドレの嫁がストーブで洗濯物を乾かしたことが原因で発生した火災だと言うことで事件は幕引きになっている…鶯谷のラブホで殺されたインド人ホステスのことについては証拠不十分で警視庁の連中が苦戦中…オドレにはなんの疑いがないと言うことは、ここで暮らす理由はなくなったと言うことや…」 知人の男は、重房に対してケーサツが他のところに注意が行っているのでその間に今宿で暮らしている実家へ帰れとさとしていました。 しかし、重房は今宿の実家へ帰ることがイヤでありましたので、知人の男に極道の道に入って、実家の家族と訣別すると言いましてイコジになっていました。 「先輩。」 「なんぞぉ…」 「先輩…親分はんに頼んでほしいのだけど…」 「ほやから、親分になにを頼むと言うねんなぁ~」 「オレ…極道になる…実家(いえ)のもんとは訣別して、先輩がいる組に入る…オレ…漢(おとこ)を磨きたいのだよぅ…先輩のような漢(おとこ)になりてぇのだよぅ…」 重房の言葉を聞いた男は『やれやれ…また重房がたわけたことをいよる…』と言う表情で、重房にこう言いまして極悪非道の道へ走るのじゃないとさとしていました。
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