挽歌

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「重房…お前は、本気で極道の世界へ行く気でいるのか?」 「オレは本気や!!」 「お前がそのように言うのであれば、覚悟はできとんやろな。」 「できてる!!」 重房がますますイコジになっていたので、男はズボンのポケットからくしゃくしゃになっているラッキーストライクの箱を取り出して、最後の一本のたばこを取り出して口にくわえたあとジッポライターでたばこに火をつけながら重房にこう言うていました。 「重房…お前の気持ちはよくわかった…ほやけど…オレは…お前を極悪非道の道へ行ってほしくないのだよ…」 「どうしてなのだよ?」 「あのな…オレはお前のためを思って言うてはるのだよ…お前やっぱり今宿の実家へ帰った方がいいよ…」 「ほやから、今宿の実家には帰りたくないと言うているのだよ!!」 「重房…オレはな…16の時に学校でもめごとを起こして放校になったのと同時に両親からカンドーされたあと路頭に迷っていたのだよ…その時に今の親分に拾っていただいたのだよ…オレは親分に十分な恩返しができていないのだよ…」 「恩返し…」 「いろんな意味でな…お前は、実家に帰れば迎えてくださる両親やきょうだいたちがいるじゃないか…」 「迎えてくれるわけねえよ!!」 重房がますますかたくなになっていたので、男は『どうしてそなな悲しいことを言うのかな…』とあきれ声で言うてから重房にこう言いまして実家へ帰れとさとしていました。
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