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父は癌で65歳で亡くなった。
葬儀の日、俺は涙は出なかったがずっと考えていた。父は俺を愛してくれたのだろうかと。父には二人の息子がいた。兄のデービッドと、俺、クリス。兄は優秀で一流大学を出て父の会社の幹部になり、そして最近社長に就任した。父の理想の息子。
俺はといえば、三流大学にやっと入り、中退。物ごころついた頃から歌が歌いたくて、ハイスクールの時から、いろいろなバンド、クラブで歌っていた。しかし、、、誰の目にも止まらず、バンドも大したことはない。
それでもバンドマンは女の子には人気だから、ガールフレンドができて、3歳の娘もいた。父とは会わないようにしていたが、顔を会わせれば、言うことが思いつかないように、父は俺の顔を見つめるだけで、何も言わなかった。
葬儀に見知らぬ美しい女が来ていた。
黒いドレスにプラチナブロンドの髪をアップにまとめ、大きめの一重パールを付けて、洗練された女。だれだろう?彼女が一番泣いていた。白いハンカチを目と鼻に何回も動かすのが目に焼き付いた。
葬儀の次の日、弁護士事務所に呼び出された。兄のデービッドも来るはずだったが、部屋へ通されると、俺とその美しい女と弁護士だけだった。
彼女は悲しみで打ちひしがれているように見えた。俺が入ると、俺をしばらく見つめて、少し微笑んで目をそらした。俺は黒のスーツは来ているが肩より長い巻き毛の長髪。この家には不相応な息子だ。
弁護士のポールが言った。
「デービッドは社用で来れない。委任状を預かっている。ではこれでそろったので始めようか。」
彼は僕を見て言った。
「こちらがリーアムの次男のクリス。そしてこちらはアン。彼女の希望でファミリーネームは、今は省きます。」
お互いに握手をした。彼女は上品なレースの手袋をしていた。
「デービッドが欠席なので、早速、話にはいります。クリス、重要な件は、もう一度デービッドの時間をとって説明します。アンは明日はフライトなので、その部分だけ、今日承認してもらいます。」
二人は、頷いた。
「クリス、リーアムは彼女に3つの宝石を、高価な宝石を残した。総額50万ドル。これをアンに相続させたいということです。」
俺は心臓が飛びだしそうに驚いた。この女は何者だ?父の恋人?でも若くて、美しすぎる。
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