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3つの宝石
彼女が静かに言った。
「宝石、見せていただけますか?」
彼女の目からとめどなく涙が流れ、ハンカチがそれを覆う。
弁護士は、カルティエ、ティファニー、ハリー・ウインストンの箱をそれぞれ明けた。光がほとばしるというほど、美しい指輪だった。
彼女はハンカチを目に当てて、「ごめんなさい」と言って泣きくれた。
涙が収まると、彼女は一つ一つの指輪を手に取り、左手の薬指につけていった。
ティファニーのブルーダイアモンド、カルティエのメレダイヤに囲まれたエメラルド、そして彼女が一番いとおしそうにつけていたのはハリー・ウィンストンのルビーの指輪。
どれも凄いカラットだ。彼女はそのルビーの指輪にキスをして箱に戻した。
彼女は言った。
「ルビーは思い出があるのでいただきますが。その他はお受けできませんわ。」
彼女は美しい。気高いプリンセスのような完璧さ。何十万ドルも前にして、この落ち着き。
弁護士は言った。
「あなたがそう言われることを見越してリーアムから遺書があります。短いですが、、、読みますよ。
「君の指を高価な宝石で覆いつくしたいという私の約束を必ず受けてほしい。永遠に愛する君に。」
彼女の大きな目から涙がとめどなく流れ、彼女は首を縦に振った。
弁護士が言う。
「クリス、リーアムの意志を承認してくれるかね?」
俺は映画でも見ているような光景から現実に戻り、頷いた。そして付け加えた。
「承認します。父の財産だ。だけど、アン、あなたが父の何だったのか説明してください。」
アンは涙を拭いて、俺を見つめた。
「私は、只の恋人だっただけ。」
「母が亡くなった後、父は癌だったことを明るく周囲に伝え、家族会議をして会社や資産の分配を決め、幸せな最期を送っていたように見えた。その時の恋人ですか?」
アンは不思議な微笑みを浮かべて言った。
「このルビーの指輪はリーアムが私に結婚を申し込んだときのものなの。そして彼は長生きしてもっと宝石を買うと言ったの。もっと長く生きて、私の指を宝石で覆うって。」
俺は母のことについては父を責めたいと思ったが、この純粋な父の心になぜか感動していた。この女はあの堅物の父を動かすほど美しい。俺の心も奪われそうな完璧さだ。彼女には魔力があるのか?俺も虜にしてしまいそうだ。
俺は言った。
「あなたには受け取る価値があると思います。」
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