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思い出のレストラン
彼女はどんな女なのだろうと、いろいろ詮索して、アールデコ調のガラス細工のMORの扉を押した。この店はたまに父が深い話をするときに俺を呼びだして食事をした店だ。高級すぎて、話題もいつも深刻で、「お前はこの先どうするのかと」、味が良いのか悪いのかわからなかった。
受付の男が言った。
「この度はお父様のご逝去、本当にお悔やみ申し上げます。」
「ありがとう。」
「お連れ様は見えております。」
彼は特別室に俺を案内した。
父はいったい何を考えていたのだろう。
彼女は白いドレスを着ていた。黒衣とは打って変わって清楚で、華やかな感じ。これが父の愛した恋人か?
「アン、持たせてすみません。」
「いいえ、ねえ、もう弁護士いないんだから、普通にしゃべりません?もしよければ。」
「もちろん。俺もその方がくつろげる。」
グラスにシャンペーンが注がれる。
俺は言った。
「では、父は君に夢中だったということだ。母を裏切って。」
彼女は不満な顔をした。
「みんなそう思うわよね。あの弁護士はリーアムから事情を聴いていたと思うから、優しかったけど。ちょっと釈明させてくださる?」
「どうぞ。」
「お母さまがなくなってからの話よ。このレストランで会ったの。」
「そうなんだ。そして父はこの美しい君に一瞬で夢中になった。」
「まあ、そういうことにしとくわ。私とリーアムの二人だけの秘密もあるんだけどね。」
「あの指輪は?」
「プロポーズされたのよ。でも受け取らなかった。私たち釣り合わないと思ったので。」
彼女は完ぺきに美しいが可愛い女だ。泣いている顔と又違う清楚さがある、と思って彼女の顔のパーツを観察した。一番素敵なのは長いまつげに囲まれた大きな青緑の瞳だ。
「そうだね。年が釣り合わないよね。」
「そうじゃなくて、私は自由な女だから、一人の男に縛られないの。」
彼女は神秘的な微笑みを浮かべて俺を見つめた。
「そうか?そう言ったの、父に?面白いね。だから男は更に君を愛して、宝石を買う。」
彼女は首を横に振った。
「私は、長生きしてほしいと思ってたわ。残りの人生を楽しんでほしいって。」
アンは下を向いて、シャンペーンの立ち上がる泡を見ていた。
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