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不肖の息子
アンは言った。
「じゃ、あなたの番よ。リーアムは二人の息子はよく育った、としか言っていなかったわ。」
「へえ、俺もその二人に入ってるのかな?兄は完ぺき、俺は落ちこぼれの放蕩息子だ。見ての通り。」
「あら、ダークスーツ似合ってるわよ。顔も悪くない。」
「どうも、、、ポジティブだね?俺は家族の厄介者。若い時から歌が歌いたくて、その夢を追って、追って、追って、こんな年になった。」
「あら、まだ若いじゃない。で、どんな歌うたってるの?」
「今、バンドでやってる。でも売れない。デビューはしてるんだけど。CDも出してるし。」
彼女は俺を観察しだした。
「じろじろみるのやめてくれよ。」
「ごめんなさい。あなたはハスキーボイスだよね。音域は?」
「歌えば、かなり行くよ。結構自信ある。」
「ねえ、クリス、髪に触ってもいい?」
彼女は俺の前髪を上げ、脇も後ろに流して言った。
「なかなか、ハンサムね。こうした方があなたがよく見える。リーアムに似てるかも。」
彼女は瞬間、悲しい顔をした。
「君って本当に父を愛していたんだね。」
「もちろんよ。それで、あなたは歌い始めたときどんな歌が好きだったの?」
「黒い曲かな。マービン・ゲイ、スティービー・ワンダー、レイ・チャールズ、、、ああいう熱唱系が好きだった。」
「曲は作るの?」
「作るけど、それを歌うと売れない。今はね、コマーシャル歌ってるんだけど、こっちは家族を養うのに助けになってる。可愛い娘がいるんだ。」
彼女が微笑で言った。
「苦労してるんだ。」
「そう、何回も母に無心に言った。母はいつも欲しい金額を渡してくれた。でもそれは父が渡していたんだと思う。」
「ご両親、あなたが歌手になるのを応援していたということね。」
「どうなんだか、そんなことありえないよ。俺があきらめるのを待っていたのだと思う。」
「そうかな?リーアムは優しい人よ。」
彼女が悪戯っぽく言った。
「クリス、何か私に歌ってくれない?父に捧げる歌でも、愛の歌でも何でもいいわ。」
「ここで?」
「だって個室だから大丈夫よ。」
「アン、君って大胆だね。こんな高級店で。」
「怖い?」
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