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「……佐藤、ちょっと上向け」
手入れの行き届いた毛並みを堪能していると、西嶋が指示を出してきた。
──なるほど、別のアングルから撮りたいのか。俺まで撮る必要性は感じられないが、引き立て役ぐらいはしてやろうじゃないか。
斜め上に構えられたスマホの方に顔を向け、猫と顔を密着させる。そして、どうだ可愛いだろううちの子は! というドヤ顔。
ふふん、猫耳を装着した野郎と愛らしい綿菓子猫さん。いい対比だろうが。
「ふぉぁ……っ!?」
西嶋が奇妙な声を発しながら顔を覆う。ただし、手元はしっかり連写している。
わかる。わかるぞ。この猫の可愛さは毎秒収めなければという義務感に駆られる。だがしかし、連写速度がスマホの限界を超えてる気がするんだが。
「猫と……お、おでこコツンってしてみろ」
「こうか?」
「ぐふぉっ……」
リクエストにお応えして猫ちゃんとおでこコッツン。いやはや、西嶋がそんな可愛らしいワードを口にするとは。猫の魅力ってすげぇな。
しかし、写真ばかり撮って飽きないんだろうか。もふもふ戯れるのが猫カフェの醍醐味だというのに。
「西嶋は触らなくていいのか? ふわふわで気持ちいいぞ」
ピンク色の肉球が付いた猫の手をおいでおいでと動かしてみる。このぷにぷにした肉球にも触ってみればいいのに。
「くぁ……っ! ン゛ン゛ッ……俺は、いい……」
例の猫耳を着けたまま悶絶しながらまたもや連写。……なんか、微笑ましいな。西嶋は触るより撮る方が好きなんだろう。眺めて愛でていたいタイプなのかも知れない。
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