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◇◇◇
「おーい、大丈夫か西嶋ー」
ゆさゆさと肩を揺すってみるが、直立した西嶋は全くの無反応である。猫カフェを出てからずっとこの調子なのだ。お陰で店の真ん前で停滞している。まるで屍のようだ……む、前にも屍ってた気がするな。既視感があるぞ。
「にーしーじーまー?」
ぺちぺちと頬を叩いてみても効果なし。駄目だこりゃあ……完全に燃え尽きてしまっている。記念撮影がそんなに精神負担だったのか? それはそれで地味にショックなんだが。
「西嶋ぁ、いい加減帰らねぇとヤバいぞ。もうそのまんまでもいいから足動かせ」
腕をぐいぐい引っ張って無理矢理動かしにかかれば、存外素直に動いた。殆ど俺に引き摺られるような格好だが致し方ない。
高い位置にあった日はすっかり傾き、辺りは茜色に染まりつつある。寮の門限は午後6時だ。もうタイムリミットまで1時間を切っていた。門限を過ぎれば過剰なまでのセキュリティシステムがフル稼働する為、例え生徒でも柵を乗り越えよっこいせ等という真似をすれば一大事だ。わざわざ警備員を起こし、面倒な手続きをしてから寮に入らなければならない。その翌日に待っているのはお説教が前菜の停学フルコース、反省文原稿用紙50枚分を添えて、だ。
──ぜっっっったい、嫌だ!
全力で屍西嶋を引き摺りながら、俺ははたとある事を思い出した。
「そうだ」
今は何を言っても耳に入らないだろうとは思うが、一応耳元で言ってみる。
「さっき撮った写真、送ってやるから後でL○NE教えろ」
カ ッ と 見 開 か れ る 目。
み な ぎ る 生 気。
「──ホントか」
「何で急に復活したし」
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