彼女はいつでも笑う

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 教室に着いたのがホームルームが始まるぎりぎりだったので、すでに担任の伏見先生は教壇の前に立っていた。  彼女に言われた通り遅刻する旨を伏見先生に伝えると、先生は少し呆れた様子で「また、怪我したのか」と呟くように言ったのだった。  伏見先生のセリフを聞いて違和感を感じた。  先生は彼女の事を良く知っているような口ぶりだったからだ。  疑問に思いながらも質問する時間も勇気もなくて、先生に促されるまま僕は着席したのだった。  クラス全員が着席すると先生は順番に出欠確認を始めた。  そして、最後の一人の名前を呼んでその生徒が返事をしたのとほぼ同じタイミングで教室のドアが音を立てて開いたのだった。 「おはよーございまーす」  静かな教室の静寂を破るその明るい声の主は間違いなく彼女だった。  クラス中の視線が彼女に集まっているようだった。自分が注目されている訳じゃないのに何故かドキドキしてしまう。  そんな僕とは対照的に彼女は堂々としている。 「はい、おはよう。新川、おまえ復帰早々怪我してんじゃないよ。とりあえず席そこだから」  入学してからずっと空席だった場所を伏見先生は指をさした。 「いやぁ、仔猫が私に助けを求めていたからさ。命は大切にしなきゃ、でしょ?」 「まったく、それで自分が怪我していたらしょうがないだろが」  先生は持っていた出席簿で彼女の頭をポンと叩いた。 「いたーい。先生それ体罰だよ!」  二人の茶番のようなやり取りにクラス中が呆気に取られているようだった。  彼女はそんな教室の雰囲気を察したのか、今度はおもむろにチョークを取って黒板に名前を書いて振り返った。 「みんなおはよう! 新川由美です。由美ちゃんって呼んでね! よろしく!」  ハツラツとした口調でみんなに自己紹介をする彼女は単純に凄いな、なんて見ていたら目が合ってしまった。 「あ、宮元君。さっきはありがとうね」  手を振りながら彼女がお礼を今度はクラス中の視線が僕に集まった。  僕はなんだか恥ずかしくて顔が熱くなったのが自分でも分かり、小さく手を上げて意思表示をすることで精いっぱいだった。
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