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 平日は互いの身体への負担を鑑み、できるだけ『最後まで』しないように心掛けている。しかし、(たま)に抑えが()かなくなるのも、また人間だ。俺にだって、『欲』に抗いきれない日もある。  昨夜のように―― 「一緒に風呂に入らないか?」  これは、俺達の誘い文句だ。あいつがシタイ時には、「一緒に風呂に入ろうぜー!」とか何とか言って誘ってくる。その晩のイニシアティブは、誘った方が優先権を得ることになる――そんなルールも、暗黙のうちに決まっていた。従って誘われた方に関しては、その日の体調に応じ拒否権を発動できるといった仕組みだ。「今夜は、ちょっと」と言えば、決して無理強いはしない。  何故なら最後までしなくとも、『快感を得られる』ことを互いに知っているから。  長年連れ添っていると、『痒い所に手が届く』関係に成熟していくものだ。俺はこいつの隅々(すみずみ)まで熟知していて、こいつも(しか)りだろう。そう考えると、そこはかとなく感慨深いものがある。  嗚呼、俺は果報者だ――なのに……
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