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4.
あいつの母親を迎え撃つ、否、歓待するための夕食メニューは、あいつの強いリクエストで『ハンバーグ』に決定した。申し添えておくが、俺は、これしか作れない訳では決してない!しかし、あいつから、節目節目でリクエストされるメニューは、決まって『僕の大好物のお前が作ったカリッカリのハンバーグ』なのだ。
春なので、白髪葱をたっぷりトッピングしよう。旬の野菜をボイルして添え、あいつの大好きなとろっとろの目玉焼きを乗せれば完成だ。
副菜は、ご自慢の『常備菜』を自分で用意するというので、任せることにした。汁は、蛤の潮汁。そして、旬のえんどう豆ご飯を炊けば上出来だ。
「あらまあ! 色とりどりの豪華なお食事ねー」
いただきます。そう言って、丁寧な箸遣いでこいつの「ママさん」は食事を始めた。
第一関門は突破した!
それにしても、薄ぼんやりなこいつの食事マナーが良いのは、この「ママさん」の、躾の賜物だったんだよな――『それだけ』は、感謝してもしきれない。
「ママさん、これこれ! このおかずは僕が作ったんだよ。食ってみてよ」
そう言って、レンジで作った『もやしのナムル』を盛り付けた小鉢を勧めている。
「あら。あんたが料理? 天地がひっくり返りそうねー。ん? あら、美味しいじゃない! ご飯が進むわね」
「だろ? だろ?」
「――ハハーン……」
やべぇ、「ママさん」がニヤリと笑いやがった! 何か始まる予感がしてきたぞ、装備を固めろ! 俺ッ!
「このハンバーグ、凄く美味しいわね。カリッカリに焼けてるかと思えば、スパイスがガンガン入ってるから、肉の味も殆どしないしねー。トッピングも、毎回趣向を凝らしてるんじゃないの? 想像つくわー。つき過ぎちゃう。うふふ……」
おいおい、けなしてんのか? 褒めてんのか? ああ、分かんねー! でも、油断するなよ、俺ッ!
「こいつの作るハンバーグは、『天下一品』だ。絶対ママさんに食べて欲しいと思って、特別にリクエストしたんだぞ。それとな、このハンバーグの美味さには、もう一つの重要なポイントがあるんだけど、わっかるかなー?」
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