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 あいつの母親を迎え撃つ、否、歓待するための夕食メニューは、あいつの強いリクエストで『ハンバーグ』に決定した。申し添えておくが、俺は、これしか作れない訳では決してない!しかし、あいつから、節目節目でリクエストされるメニューは、決まって『僕の大好物のお前が作ったカリッカリのハンバーグ』なのだ。  春なので、白髪葱をたっぷりトッピングしよう。旬の野菜をボイルして添え、あいつの大好きなとろっとろの目玉焼きを乗せれば完成だ。  副菜は、ご自慢の『常備菜』を自分で用意するというので、任せることにした。汁は、(はまぐり)潮汁(うしおじる)。そして、旬のえんどう豆ご飯を炊けば上出来だ。 「あらまあ! 色とりどりの豪華なお食事ねー」  いただきます。そう言って、丁寧な箸遣いでこいつの「ママさん」は食事を始めた。  第一関門は突破した!  それにしても、薄ぼんやりなこいつの食事マナーが良いのは、この「ママさん」の、(しつけ)賜物(たまもの)だったんだよな――『それだけ』は、感謝してもしきれない。 「ママさん、これこれ! このおかずは僕が作ったんだよ。食ってみてよ」  そう言って、レンジで作った『もやしのナムル』を盛り付けた小鉢を勧めている。 「あら。あんたが料理? 天地がひっくり返りそうねー。ん? あら、美味しいじゃない! ご飯が進むわね」 「だろ? だろ?」 「――ハハーン……」  やべぇ、「ママさん」がニヤリと笑いやがった!  何か始まる予感がしてきたぞ、装備を固めろ! 俺ッ! 「このハンバーグ、凄く美味しいわね。カリッカリに焼けてるかと思えば、スパイスがガンガン入ってるから、肉の味も殆どしないしねー。トッピングも、毎回趣向を凝らしてるんじゃないの? 想像つくわー。つき過ぎちゃう。うふふ……」  おいおい、けなしてんのか? 褒めてんのか? ああ、分かんねー! でも、油断するなよ、俺ッ! 「こいつの作るハンバーグは、『天下一品』だ。絶対ママさんに食べて欲しいと思って、特別にリクエストしたんだぞ。それとな、このハンバーグの美味さには、もう一つの重要なポイントがあるんだけど、わっかるかなー?」
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