宇宙の缶詰

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 太陽系から遥か彼方。銀河上流に浮かぶちっぽけな惑星のちっぽけな観測基地――通称〝銀河の最果て〟に赴任して三十年以上が経つ。計画初期には二十名以上滞在していたスタッフも、今では所長であるレムと助手であるシイナの二人きり。当時の名残である巨大なダイニングテーブルは、寂寞感を与えないでもない。だが雑然とした騒々しさよりも、うつろな静寂を好むレムは、概ね現状に満足していた。  何より……ほどなくして芳しく豊かな香りが、ゆうらり漂ってくる。助手が淹れるお茶の味は素晴らしい。半径五万光年以内に、これほどの腕前を持つ者が他にいるとは思えなかった。  カップと焼き菓子を載せた盆を持ったシイナが現れ、和やかなコーヒーブレイクが始まる。釉薬が塗られ藍色に焼き上げられたカップに、琥珀色の液体はよく映えた。食器を選ぶ美的センスも、彼女を高く買う理由の一つだ。レムは上機嫌で、何も入れないまま薫り高い液体に口を付けた。  シイナも向かい合った椅子に腰掛け、カップを手にしながら、 「そうそう、小惑星群の衝突警告について宇宙旅行協会からお礼のメールが届いていましたよ」 「ああ、そんなこともあったね。しかし、あれは運が良かった。宇宙の缶詰も届いたわけだし」     
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